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情報の安定性と信号強度の両立を実現 ―保磁力最大約10倍を達成、次世代省エネ磁気メモリへ―

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科応用化学専攻 助教 神永健一
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 従来は困難とされてきた、磁石の強さ(磁化)と情報の保持能力(保磁力(注1)の両立を、独自の「ナノ傾斜設計(注2」により実現しました。
  • 従来の均一材料と比べ、磁化を維持したまま、保磁力を従来の最大約10倍に向上させることに成功しました。
  • 大強度陽子加速器施設J-PARC MLF(注3と3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)(注4を連携活用した解析により、全体の性能向上を実現するメカニズムが明らかになりました。
  • デジタル社会の拡大に伴う消費電力増大の課題解決に向け、待機電力を大幅に削減できる次世代省エネ磁気メモリの実現につながる成果です。

【概要】

デジタル社会の進展に伴い消費電力の増大が課題となる中、待機電力を大幅に削減できる次世代磁気メモリの開発が注目されています。磁気メモリの性能を高めつつ待機電力を削減するためには、読み出し信号を強化するとともに情報の保持能力を高める必要があります。しかし一般に、情報の保持能力(安定性)を高めると、読み出し信号の強さが低下するというトレードオフがあり、長年の課題でした。こうしたメモリ性能は、材料の保磁力と磁化という物性によって決まります。

東北大学らの研究グループは、材料の成分をナノメートル単位で膜厚方向に連続制御する「ナノ傾斜設計」により、磁化を高水準で維持したまま保磁力を従来比約10倍に高めることに成功しました。さらに東北大学での評価に加え、J-PARCとNanoTerasuを連携活用した中性子と放射光の相補的解析により、高性能化のメカニズムを解明しました。本成果は、NanoTerasuを活用した初期の研究成果の一つであり、従来の材料限界を超える次世代量子スピンデバイスの実現に向けた新たな材料設計指針を示すものです。

本成果は、2026年3月12日(現地時間)付けで、科学誌ACS Applied Electronic Materialsにオンライン掲載されました。

なお、本成果は東北大学大学院工学研究科の神永健一助教、松本祐司教授、総合科学研究機構中性子科学センターの花島隆泰研究員、阿久津和宏副主任技師、量子科学技術研究開発機構の上野哲朗主幹研究員、大坪嘉之主幹研究員、名古屋大学未来材料?システム研究所/国際高等研究機構の永沼博特任教授、日本原子力研究開発機構の青木裕之研究主幹らの共同研究によるものです。

図. 国内の大型研究施設を連携活用し、相補的解析を行った。

【用語解説】

注1. 保磁力(ほじりょく):磁石の磁化の向きを反転させるために必要な磁場の大きさ。この値が大きいほど、記録した情報が外部の磁気的な乱れに強く、データが消えにくい「粘り強い」磁気メモリ材料であることを意味する。

注2. ナノ傾斜設計:材料の成分濃度を、膜の厚さ方向に沿ってナノメートル(10億分の1メートル)単位で連続的に変化させた構造を人工的に作製する手法。今回の研究では、ルテニウムの濃度を傾斜させることで、均一に混ぜた場合には解決できなかった性能の課題が解消できた。

注3. J-PARC MLF:茨城県東海村にある世界最大級の大強度陽子加速器施設であり、物質?生命科学実験施設(MLF)では高強度の中性子ビームを利用した実験ができる。MLFに設置されたビームラインBL17 SHARAKUでは偏極中性子ビームを用いて、材料の内部に隠れた磁気の状態をナノスケールで層ごとに詳しく調べることができる。

注4. NanoTerasu(ナノテラス):3GeV高輝度放射光施設。国の主体機関である量子科学技術研究開発機構と地域パートナー(宮城県、仙台市、東北大学、東北経済連合会で構成)の代表機関である光科学イノベーションセンターによる官民地域パートナーシップという新しい枠組みによって整備?運営する特定先端大型研究施設で、東北大学青葉山新キャンパス内に立地している。太陽の10億倍明るい強力な光(放射光)を用いた実験ができる。ビームラインBL13UではX線磁気円二色性(XMCD)測定によって、特定の元素(今回はマンガン)がどのような磁気を持っているかを精密に観察できる。

【論文情報】

タイトル:Balancing Both Coercivity and Magnetization in Compositionally Graded Ru:LSMO Epitaxial Thin Films: A Separate Analysis of Surface/Interface and Bulk Magnetism by a Complementary Approach
著者:Gaku Sato, Kenichi Kaminaga*, Takayasu Hanashima, Kazuhiro Akutsu-Suyama, Tetsuro Ueno, Yoshiyuki Ohtsubo, Yuto Abiko, Ryota Kimura, Keita Sasaki, Hibiki Murakami, Keisuke Haruki, Ayumu Kikuchi, Rintaro Kimura, Hiroshi Naganuma, Shingo Maruyama, Hiroyuki Aoki and Yuji Matsumoto
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 助教 神永健一
掲載誌:ACS Applied Electronic Materials
DOI:10.1021/acsaelm.6c00176

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科 助教 神永 健一
TEL: 022-795-7267
Email: kenichi.kaminaga.d6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科 情報広報室 担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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