2025年 | プレスリリース?研究成果
津波リスクへのパラメトリック型保険の適用手法を開発 保険金支払額と実際の損害額の不一致を最小化
【本学研究者情報】
〇災害科学国際研究所
准教授 サッパシー アナワット
研究所ウェブサイト
【発表のポイント】
- 自然災害による損害の保障において、「パラメトリック型保険」が近年注目されています。事前に定められた災害指標(震度や風速など)を適用することで、保険金を迅速に支払うことができます。しかし、津波のような複雑な自然現象には適用が難しいことが課題とされています。
- 本研究では、確率論的津波リスク評価(PTRA)注1を用いて、津波パラメトリック型保険におけるベーシスリスク(保険金支払い額と実際の損害の不一致)を定量化し、リスクを最小化するモデルを開発しました。
- このモデルを仙台港に適用した結果、浸水深または現在ある複数の観測点を保険金支払いの指標とすることで、ベーシスリスクが大幅に低減することが示されました。
【概要】
保険は災害によるリスク低減のための重要な手法の一つです。パラメトリック型保険は、事前に定められた災害指標に基づいて保険金が支払われる仕組みで、災害後に現場で被害の査定が行われる従来型の保険とは異なり、たとえ広域であっても保険金を迅速に支払うことが可能となります。しかし津波のように複雑な自然災害に対しては適切な指標の作成が難しく、普及は限定的でした。
東北大学大学院工学研究科の三木優志大学院生と災害科学国際研究所のサッパシー アナワット准教授らのチームは確率論的津波リスク評価(PTRA)を用いて、津波パラメトリック型保険におけるベーシスリスク(保険金支払い額と実際の損害の不一致)を定量化し、そのリスクを最小化するための最適化モデルを開発しました。このモデルを仙台港に適用した結果、浸水深を保険金支払いの指標とすることでベーシスリスクが大幅に低減しました。さらに複数の指標の組み合わせで支払い精度が向上し、より実損害に即した保険設計が可能であることも確認されました。本研究成果は科学誌npj Natural Hazardsに2025年7月21日に掲載されました。

図3. 異なる指標を使用した場合のベーシスリスクの低減率。陸上の観測点を使用した場合に最もベーシスリスクを低減できる可能性を示しています。
【用語解説】
注1. 確率論的津波リスク評価(PTRA) 将来の津波被害が「どのくらいの規模で、どのくらいの確率で起こるか」を評価する確率論的手法。過去の地震記録やプレートの動きなどの情報をもとに、将来起こりうる複数の津波シナリオを設定し、それぞれの被害規模と発生確率を計算します。
【論文情報】
タイトル:A proposed approach towards minimizing basis risk in tsunami parametric insurance scheme
著者:Yushi Miki1, Constance Ting Chua2, Anawat Suppasri2, An-Chi Cheng2,
Tomoya Iwasaki2,3, Yugo Shinozuka3, Takafumi Ogawa3 and Fumihiko Imamura2
掲載誌:npj Natural Hazards
DOI: 10.1038/s44304-025-00127-x
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学災害科学国際研究所
准教授 サッパシー アナワット
TEL: 022-752-2090
Email: suppasri.anawat.d5*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学災害科学国際研究所 広報室
TEL: 022-752-2049
Email: irides-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)
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